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第8シリーズ 10話 「高利貸しの女の子」
佐藤千尋(森部万友佳)の前に現れた男(山本浩司)は教育ジャーナリストを名乗り、イジメの実態を調べるため裏サイトに侵入したと語る。しかし謝礼の現金に釣られた千尋が協力に応じると男は豹変、千尋は男の部屋に監禁されてしまう。一方その頃、「千尋を励ます会」の提案者がクラスにいないと知った生徒たちは必死に千尋を捜索。裏サイトにSOSが書き込まれたことに気づくと、金八(武田鉄矢)や大森巡査(鈴木正幸)を伴って現場に急行、間一髪で千尋を救出する。
この噂はチェーンメールとなって広まり、週刊誌が桜中へ取材に来る騒ぎになる。千尋の話で盛り上がる3Bに、金八は「千尋があんな目に遭ったのは、悪口を書き込んだ一人一人に責任があるんじゃないのか」と訴え、卑怯極まりない裏サイトを猛烈に批判する。ただ当の千尋は事件にショックを受けることもなく、借金の取立てなどお金稼ぎに精を出している様子。「友達なんて平気で裏切る。お金は裏切らないよ」と笑顔さえ浮かべて話す千尋に、金八は複雑な気持ちになる。
翌日、金八は「お金について具体的に考える授業」を始める。生徒それぞれに今お金で買いたいものをボードに書かせ、それを黒板に張り出しながら、実はそれらのものはお金で買えない心の豊かさに繋がっているのだと説明する。千尋のボードが白紙だったのを見ると、金八は「あの夜、仲間が欲しかったから出掛けて行ったんじゃないか、本当は寂しかったんじゃないか」と問い掛ける。「そんなんじゃない」と突っ張る千尋の目からは涙が溢れていた。
放課後、千尋は個人ノートを提出。しかし金八の思い空しく、そこにはこれからもお金集めに執着していく旨があっけらかんと記されていた。「金よりも大事なものがあることを、必ず教えてやる」。金八はそう呟くのだった。
平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表
塚田りな (萩谷うてな) |
大西悠司 (布川隼汰) |
森月美香欲しいものは父、母 (草刈麻有) |
北山大将欲しいものは親 (亀井拓) |
玉田透二度にわたる鼻血 (米光隆翔) |
茅ヶ崎紋土 (カミュー・ケイド) |
漆田駿お金で買えない命 (坂井太陽) |
五十嵐雅迪塾に通っている (田辺修斗) |
廣野智春シーフードヌードル (菅野隼人) |
里中憲太郎まだ不登校続く (廣瀬真平) |
安藤みゆき金輪が千尋の命の恩人 (梶尾舞) |
諏訪部裕美塾に通っている (山田麗) |
金井亮子 (忽那汐里) |
田口彩華塾に通っている (高畑充希) |
江藤清花千尋捜索グループ (水沢奈子) |
渡部剛史祐樹をヒーロー扱い (岩方時郎) |
金輪祐樹坦々麺のカップ麺 (植草裕太) |
岩崎浩一金なしでは何もできない (真田佑馬) |
川瀬光也お金で買えない学歴 (高橋伯明) |
長谷川孝志金持ちも不幸な結婚はある (坂本優太) |
中村美恵子自分も行っちゃうかも (藤井真世) |
平野みなみお金で買えない友情 (菅澤美月) |
佐藤千尋3万円で男についていく (森部万友佳) |
和田順子塾に通っている (井本杏子) |
川上詩織 (牛山みすず) |
教卓 | ※名前にカーソルを合わせると…? |
みどころ談義
- ● 金八先生の気持ちが伝わらなかった個人ノート! これは初めてのケースですよね。
- ○ 今まで先生は、ノートに目を通すと満足そうに手を重ねるのが恒例だったんだけれど、今回は歯噛みするようなラスト。でもこれで面白くなってきたよ。素直に生徒が納得してくれるのもそれはそれでいいお話なんだけれども、過去のシリーズに共通してあった「裏切られても生徒を信じる」という部分がなくて物足りない感じもあったから。
- ● このくらいの毒があった方が楽しみが増えますよね。「お金よりも大切なものを必ず教えてやる」と決意を込めるラストシーンを見ると、今後への期待が俄然高まります!
- ○ 冒頭の方で幸作と飲んでいるとき、金八先生は「30年前の子も今の子も、本質は全く変わっちゃいない」なんて言っていたじゃない。もしかしたら金八先生もあの頃と似た情熱を今後また見せてくれるのかな、と想像するとワクワクするよ。
- ● さて、今回は千尋です。わいせつ男に捕まってどうなることかと思ったんですが、その事件自体がセンセーショナルに展開することはなくて、あくまで千尋の気持ちや3Bを中心に語られましたよね。そういう意味では大変な被害にならなくて少しホッとした部分もあります。
- ○ 3Bの誰かが千尋を騙したという、エグい可能性だってあったんだよなぁ。でもそうではなくて外部の犯行だったと。しかしあれだけの目に遭いながらショックを引きずらずお金儲けモードにすぐ切り替えられる千尋の姿には、やっぱり考えさせられるものがあるよ。
- ● 不登校になっても仕方ないくらいの事件でしたもんね…。それなのに初めから人の評判など気にしていないという風情で。千尋は第1話ではあったかい絵画を描いていてホンワカした子なのかなという印象が最初はあったんですが、利益の低い仕事で揉める親をバカみたいとまで言っていて、「お金で苦労するのは嫌」という意識がホントに徹底している冷めた子でした。これも親の背中を見て育った一つの形といえますよね。
- ○ うん。この問題にも「親子関係」の影。前回の時点では「親のため、家のための貸金業」なんてここで予想したけれど、どうやら千尋はお金を家に入れていないようなんだよ。そして「友達に嫌われても構わない」という割り切りは、裏サイトの標的になったことで決定的になったんだろうね…。「お金は裏切らない」という言葉の裏には、本当は親や友達とも仲良くやりたかったのに裏切られた、そんな傷があるのかもしれないな。
- ● それで金八先生は、お金で買える「物」とお金で買えない「心」の対極性について授業をするんです。対極性というよりもっと突っ込んで、お金で買えるものも結局はお金で買えないものに繋がっている、というところまで踏み込んだ主張をしたんですが…、親にも友達にも失望しきった千尋の心の奥底までは届きませんでした。
- ○ お金との向き合い方って、個人の価値観の違いで大きく変わるものでしょ。だから正しい正しくないの判断を簡単につけられる問題ではないよね。現に千尋の両親がいつも揉めているように、生きるうえで不可欠なものには間違いないし、すっぱり否定するわけにもいかない。
- ● だからイガピーみたいなのにやたらとツッコミ入れられちゃうんですよ(笑)。
- ○ あれには笑っちゃったなぁ。イガピーは今回急に喋りだしたと思ったら、いきなりハーレム願望だとか、前回のコスプレ趣味に続いてそれこそ空気が読めないヘンテコなキャラクターになっちゃって。
- ● 高級マンション住まいらしいですし、贅沢に慣れすぎてああいう発想になるのかもしれませんよね。そうなると千尋とは対照的です。
- ○ イガピーが言うように、お金持ちはお金のことを考えなくていいから幸せで、もっと儲けたいといつも考えている千尋は不幸せ? それも難しいよね。ただ、「学校はお金儲けの場で、友達なんかいなくて構わない」という姿勢はやっぱり寂しいよ。周りの皆の方が間違っているのよと言いながら、自分がどんどん寂しい奴になっていっちゃってる。そこは千尋にも気づいて欲しいなぁ。
- ● そうですね…。さあそして今回はもう一つ、金八先生が裏サイトを猛然と批判してみせるシーンも大きな見せ場でした。
- ○ こっちはもう、お金に対する価値観とは違って多くの人の溜飲を下げたんじゃないかな。匿名をいいことに人を無責任に傷つける卑怯な真似はやめなさい!ということだよね。いやぁ、初回からずっと横たわっていた問題に、金八先生は10話目にしてようやく手をつけてくれた(笑)。
- ● でもこれで終わる気配は全くないですよね。むしろチェーンメールなんていう厄介なものが新たに登場してきているほどですし、裏サイトそのものが今度は「金八うざい」の大合唱で溢れる予感さえします。
- ○ 裏サイトの中傷にしても千尋の貸金にしても、「犯罪だぞ!」という観点からやめさせるんじゃなくて、もっと道義的な部分で、いかに生徒の心や意思を真っ当な方へ向かせるか、事実とまっすぐ向き合わせるか。今の金八先生はそこを強調している印象がすごくある。まさにそこがね、子供たちに必ず教えてやりたい「お金よりも大切なもの」なんじゃないかなぁ。
- ● 職員室で遠藤先生が「千尋にも過失がある」と言う場面がありましたけど、そういう法的な見方をする前にもっと大事なものがあるだろう、ということですかね。さぁ、次回は早くも今年最後の回です。大将と美香に共通する親への渇望感、なんて予告めいたシーンもあって、今後の展開がますます気になります!
- ○ 今まで先生は、ノートに目を通すと満足そうに手を重ねるのが恒例だったんだけれど、今回は歯噛みするようなラスト。でもこれで面白くなってきたよ。素直に生徒が納得してくれるのもそれはそれでいいお話なんだけれども、過去のシリーズに共通してあった「裏切られても生徒を信じる」という部分がなくて物足りない感じもあったから。
その他の周辺状況・小ネタ
- 居酒屋に寄った金八と幸作は、乙女の彼氏・湯山たちが忘年会をしているところに遭遇する。「乙女と結婚する気はない」と話しているのを耳にすると、金八はすっかり一人の父親の顔になって動揺。いてもたってもいられず湯山を呼び止め、乙女の父だと名乗った上で「そのうちゆっくり話したい」と告げる。湯山は恐縮。この出来事はまだ乙女には伝わっていない様子。
- やけになった金八、ご飯に日本酒を注いで作った「サケ茶漬け」をがっつく。「お腹いっぱいと酔うのがいっぺんにできるんだ」とのことだが、果たして味の方は…?
- 千尋を襲おうとした男は、少女わいせつの常習犯だった。金八はその男と湯山の姿を重ねてみてしまい、あろうことか男を何度も「湯山!」と呼んでいる。そのたびにちゃんと訂正する幸作。
- 千尋が男のノートPCから素早くSOSの書き込みができたのは、男が裏サイトのURLを既にブックマークに登録していた、あるいはブラウザの履歴から辿った、なんて見方はどうでしょう? ちなみに千尋の部屋のPCは、ブラウン管タイプの旧型モニタ。家の貧しさを感じる。一方、坂本家のモニタは新型のワイド液晶。
- 裏サイトに千尋からSOSの書き込みがあった時、金輪の携帯が鳴ってそれが分かる。もしサイトに書き込みがあった時にメールで知らせを受けられるような仕組みになっているのだとすれば、その設定ができる人というのは管理人しかいないわけだが?
- 警察へ迎えに来た両親に、頬を叩かれてしまう千尋。これもまた千尋の心を硬くさせたのか。
- 金八は湯山にも千尋の両親にも、息子の幸作のことを丁寧に紹介している。いいぞ親子鷹。
- 千尋の噂が街中に広まったことについて、鹿島田校長や北副校長は、やっと上向いてきた桜中の評判がこれでまたガタ落ちだと激怒。「やってくれましたね坂本先生」と金八を非難する。金八は金八で、週刊誌に対して嘘の説明で隠ぺい工作をした校長に憤る。
- 千尋の部屋の机の上には、お金儲けのハウツー本がずらり。
- 幸作は自宅のPCで3B裏サイトを検索し、発見。千尋の悪口で溢れている中、金八も槍玉に挙げられていることを知る。その陰湿な内容に金八はむかっ腹。
- みなみがボードに書いた「お金で買いたいもの」は、「私の写真集」と書いてある? 職員室で金八先生が見て苦笑していた。
イガピーの「私」ノート
今日の授業で、僕は自分の誤りに気づきました。
将来は一人で4LDKに住んで、ハーレムを作りたいと思います。
僕の趣味は、女子フィギュアスケートを見ることです。
以上
——— 金八 「分かってねぇな、コイツは…。」
佐藤千尋の「私」ノート
先生の言うように、お金で買えないモノって
あるんだよね。私が本当に欲しかったの、
両親の笑顔だったのかもしれない。
でもね先生、私はやっぱりお金が大事。
なんだかんだ言っても結局最後はお金で
人生決まると思う。だから、これからもお金を
貯めることにした。ケチとかセコイとか、みんなに
言われて嫌われてもいい。
先生知ってる? お金って寂しがり屋さんなんだよ。
だから、仲間が沢山いる方へいる方へ
集まるの。
これからも私の大事なお金たちに、仲間を
沢山増やしてあげようと思っています。
以上
——— 金八 「金よりも大事なものがあることを、必ず教えてやる。…必ず。」
参考文献・挿入歌・BGM・資料等
- 【書籍】 ブログの達人がこっそり教える おカネの儲け方 (佐々木祐二著、中経出版)
- 【書籍】 目からウロコ おカネ儲けの法則 (増田俊男著、ビジネス社)
- 【書籍】 金儲け哲学 (糸山英太郎著、かんき出版)
- 【書籍】 もっと儲かりまっせ。 (栗本唯著、あさ出版)
- 【書籍】 稼げる人 稼げない人 (古田英明編、総合法令出版)
- 【書籍】 インターネット通販の始め方・儲け方 (平本隆之著、ぱる出版)